日本の技能実習制度に対する海外の反応は?
2018年11月17日土曜日
実は海外で日本の技能実習制度というのはほとんど認知されていません。英語で技能実習制度の海外の反応を調べようと思ったとしても、実はほとんど不可能なのです。他国のように技能実習という在留資格を持たず、普通に残りの26種類の在留資格でまかなったらいいのでは?
*この記事はイザナウを運営している株式会社アクティブゲーミングメディア(130人中6割が外国人社員)のスタッフによって作成されています。
東洋経済さんの記事で、最近毎日のようにニュースで耳にする技能実習制度の問題が述べられていました。
1つめの問題は農家が技能実習生を雇用していたけど、そもそも技能実習生を雇用する上での規約をわかっていなかったという話。
技能実習生は請負契約でも雇用契約でも、実習計画に基づいた範囲でのみの就労しかできません。
給料は時給換算して400円。就労時間外での業務など、入管法違反を行っていたというものです。
2つは日立製作所(日立)で、技能実習生に技能を学べる作業を行わせていなかったために、技能実習計画(*)が許可されない状況に陥り、フィリピン人の技能実習生99人を一気に解雇した問題です。
(*)技能実習計画とは
外国人技能実習制度の本来の目的とは、日本国にて培われている技能等を開発途上国への円滑な移転と開発途上国の経済発展を担う一番大切な人づくりが大切と考えられているため、本来の目的をまっとうしてもらうためです。
そのため、技能実習を行わせようとする企業は、技能実習生ごとに技能実習計画をつくります。その計画を、外国人技能実習機構に認定されなければならない規則になっています。
上記の問題をまとめると、
・企業側(技能実習生の雇い主)が技能実習制度の仕組み、規則を理解していないこと
・技能実習生に低賃金で長時間労働させること
・技能実習生の本来の目的である、「技能の実習」をさせずに、ただの労働者としてあつかっていたこと
この3点です。
今最近話題になっている技能実習制度の問題は、すべてこの3点であるといっても過言ではないですが、そもそも技能実習制度を日本が起用しているのは、なぜなのでしょうか。
また、これだけ日本で問題になっている技能実習制度は海外から見たらどう思われているのか、海外の反応はどうなのか、を見ていきたいと思います。
1:日本の技能実習制度に対する海外の反応
みなさんは、
「日本でこれだけバッシングを受けている技能実習制度は、海外でも批判が多いだろう」
と想像する方も多いと思いますが、実は海外で日本の技能実習制度というのはほとんど認知されていません。
弊社(株式会社アクティブゲーミングメディア)の外国人社員も、母国にいるときにはそんなものがあることすら知らない人がほとんどでした。
そもそも海外の在留資格には技能実習制度というものが存在しません。
それゆえ、技能実習制度を導入している国(ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイなど)以外の国の人は、基本的に技能実習制度というものを知りません。
英語で技能実習制度はTechnical Internship Programと言いますが、この言葉を知っているのは、
上記であげたベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイなどの、技能実習生として、日本に来ようとしている人たちのみと言ってもおかしくないでしょう。
ですから、英語で技能実習制度の海外の反応を調べようと思ったとしても、実はほとんど不可能なのです。(日本の企業や日本のメディアが書いた英語の記事はいくつか見うけられます)
それほど、技能実習制度というのは、日本特有のものなのです。
2:そもそも技能実習制度とは
厚生労働省の言葉を借りると、技能実習制度とは
外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としております。
平成28年11月28日に公布され、平成29年11月1日に施行された外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号)に基づいて、新しい技能実習制度が実施されています。
つまり、開発途上国の人々に日本の技術を学んでもらって、それを国に帰って発揮してもらうというのが技能実習制度の本来の目的です。
その目的とは違う理由で外国人技能実習生を雇用し、また雇用する上での給料、勤務時間などの労働条件がひどすぎるために昨今のように問題が多く取り上げられているのです。
もともとの本来の目的通りにしていれば、このような問題はなかったはずです。
・受け入れ方式は2種あり、「管理団体型」「企業単独型」があります。
「管理団体型」は事業協同組合等の団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業に技能実習生をいれる仕組みです。
「企業単独型」は日本企業が、海外の現地法人や取引先企業の常勤職員を直接受け入れる仕組みです。
今の日本ではほぼ90パーセント以上が管理団体型をとっています。
・技能実習制度の賃金は?
技能実習生も、日本の労働法に基づいた雇用条件の設定と同じです。
特別他のことをする必要もなく、通常の日本人を雇用するサイト同じ条件での給料条件となります。
・技能実習制度と在留資格は何が違うのか
在留資格の中に技能実習という分野があります。
ごちゃまぜになりがちかもしれませんが、27種類あるうちの在留資格(*)の中の1つとして、技能実習という在留資格があります。
(*)企業側が知っておくべきビザの種類はこちら
・なぜ技能実習制度というものができたのか。
1960年代後半に、海外進出した日本企業が現地法人から現地社員を招聘し、技術や知識を習得した現地社員が、帰国後、その技術を母国(開発途上国)で発揮させたことから、国際貢献と国際協力の一環として1981年(昭和56年)に在留資格が創設された。
3:そもそも技能実習制度は必要なのか?
正直言って、「この技能実習制度は開発途上国の役に立てるように」という名目で、日本がいいように外国人労働者をつかっていると見られてもおかしくありません。
技能実習生として母国からくる外国人たちは、自国でお金が稼げないから、日本で稼いだものを自国に持って帰る、またその技量を母国で使うということを本当に望んでいる人が多いと思います。
日本の「企業側が技能実習制度の詳細を理解していなかったから」また「自分の企業の労働者が足りないから、低賃金で働かせられる技能実習生を使った」は言い訳にしかすぎません。
これを繰り返すなら、他国のように技能実習という在留資格を持たず、普通に残りの26種類の在留資格でまかなったらいいのではないか、とも思います。
技能実習制度を続けるならば、国はもちろん企業も徹底して労働条件を守り、技能実習生の権利を守る必要があるのではないでしょうか。
4:まとめ
政府は今現在もめていますが、もし安倍さんが在留資格を拡大すると言い出さなかったら、この問題も今まで通りほったらかしだったに違いありません。
今までも問題があったのに、現在安倍さんを批判するというやり方で、改善しようとしている。
これも正直おかしな話です。
もっと前からわかっていたならなぜ手を打たなかったのか。
なぜわかっていたのに、見て見ぬ振りをしていたのか。
政府の人には技能実習制度、外国人受け入れ拡大を批判する前に、そこらへんを自覚していただきたいと思います。
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外国人のプロを日本に紹介することが、私のミッションであり、宿命である