ゲーム会社をやっています。外国人のプログラマーを雇ってみた。
2019年2月6日水曜日
聞こえは良いけど、開発現場にGDDを読めない仲間を入れると、面倒なこともある。
ゲーム開発の現場は、実にクリエイティブな環境であり、『アーティスト』とも呼べる様々な技術者が共存している。
イラストを描く人、アニメーター、モデラー、シナリオライター、ゲームを評価するプロフェッショナル・・・
クリエイティブな環境の中でも、ゲーム開発と言うのはもっともの創造性に満ち溢れた空間ではないでしょうか。
一方、最近IT社会では『グローバル化』という言葉がたやすく使われるなか、日本のゲーム業界は常に海外と対立してきているような業界なんです。
和ゲー 対 洋ゲー、RPG 対 JRPG、日本で受けるビジュアル 対 二次元コンテンツ・・・
ゲームの世界においても日本と言う島国が異色の存在であり、特別な社会なんです。
そんな中、日本ゲーム会社でも人材が足りない現実が厳しくなっていて、会社の立場や規模によって色々な対策が実行されています。
例えば、開発を国内で外注する会社もあれば、海外のスタジオを使ったり、もしくは開発の一部のみ(例:イラスト制作)下請けに任せている会社もある。
やり方は会社の資金力や哲学にもよっても変わりますが、まぁとにかくゲーム業界とは柔軟な業界です。
そんな中、最近では人材不足に今までなかったような形で対抗している会社もあります。
これは、『グローバルな時代合わせて・・・』と言うべきでしょうか、外国人のプロを日本に呼び込んで、雇用をする会社です。
聞こえは、とても良い。
『外国人を雇用すれば、グローバルに受けるゲームを開発できるようになる』
『現場に新しい風を吹かせ、英語でコミュニケーションをとるプロを入れよう』
など、本気で思っておられるゲーム会社の経営者はおられるのではないでしょうか。
志は大変素晴らしいですが、日本のゲーム開発現場に外国人の技術者を入れると、いろいろな問題がおきます。
これらは、あくまでに私自身が今まで経験した問題ですが、厳選した9点をご紹介していこうと思います。
1:外国人は、日本のGDDをまず、読めない
なら、GDDを英訳したら良いんじゃないか・・・と思う方はいらっしゃるでしょう。
しかし、GDDは常に更新するドキュメントですので、いちいち英訳なんてしていられませんし、言葉だけの問題ではない。
GDDの構造も海外のGDDのものとは違ったりするので、開発工程表、コードのコメント等・・・外国人を1人入れることによって、開発チームで様々な余計な手間が発生するものです。
少なくとも、ディレクターやリードプログラマーの作業は、割と増えてしまったりします。
この点は大袈裟に聞こえるかもしれませんが、仕事の全体的な進め方や、会議1つのあり方でも違ってきますので、本来不必要なカロリーを消費してしまいことがあります。
2:カジュアルゲームの開発を嫌う
日本のゲーム業界で支払われる平均給料は、海外のほとんどの先進国に比べても『低い』です。
(特に、北米・欧州のゲーム開発会社の平均給料と比べて、日本の給料は愕然と低いです)
となると、好条件の仕事を捨ててでも来日したい多くの開発陣は、こんな特別な事情があります。
『日本で働きたい』
そうです。10代から日本のRPGや格闘ゲームに魅了されたり、もしくは時には5歳あたりから日本のIPコンテンツに憧れる外国人が、多いです。
これは日本のゲーム業界にある、いや、日本にしかないアドバンテージ、ですね。
いざとなって日本のゲーム業界に入門できる時に、興奮で手が震える人もいます(私も、そうでした)
しかしながら、外国人はいわゆる、モバイルコンテンツやFTP(フリーツープレイ)コンテンツではなく、憧れのタイトルのようなゲームの開発に携わりたいと思っているので、モバイルゲームの開発になると、とにかく文句を言うことが多い。
何百回・・・とまでは言いませんが、『こんなものを開発するために日本に来たんじゃない』と言うセリフを、外国人のプログラマー仲間から、よく耳にするものです。
やはり日本のゲーム業界で働かせてもらっている、と言う喜びは、場合によって数週間で薄まっていくものです。
3:すぐに引き抜かれる、もしくは転職する
これは、仕方ありませんね。
上記の2で取り上げた問題により発生してしまう、もっとも深刻な問題です。
あなたの会社が、古き良きゲームパブリッシャーや、ブランド力のある開発会社じゃない限り、まぁ引き抜きをされなくても、人材は必ず手に摑んだウナギのように、指の間に滑り抜いてしまいます。
(『ブランド力のある開発会社』とはなんぞや、と聞かれると、我々外国人から見るとプラチナゲームズやアークシステムワークスのことですね。ハクの付く仕事をしていると、任天堂、SQNX、カプコンレベルからオファーがない限り引き抜かれることがないでしょう)
4:家族に不幸や何か問題があると、長期の休みに入る
これは仕方がないことですね。
ただ、現実問題として、例えばリードプログラマーが急に10日間の休みをとってしまう、開発中のプロジェクトにとっては致命的な時もあるのではないでしょうか。
5:使っている技術は違う
ミドルウェアーの定着に置かれてはこの問題は若干改善され、UnityやUnreal Engineになると、むしろ海外の方が初期から触っているクリエイターが多い。
でも、それ以外のソフトやツールと言うと、やはり日本で使われているものとは、違うのではないでしょうか。
(例:作業進捗管理ツール、など)
また、管理をされることに対し、免疫力の極端に弱い外国人が、多いというのも事実です。
ならば、なぜ私の会社であるアクティブゲーミングメディアは、11カ国もの開発人員を日本国内で置いているのか・・・と突っ込まれる可能性がありますが、答えは簡単です。
当然、外国人にも、様々な強みもあるからです。
6:日本人にはないような感性を持っているアーティストが多い
日本人には、『漫画』と『アニメ』と言う、まぎれもなく重たいお荷物を背負っています。
それに比べて外国人は、『キャラデザインはこう出なくては!』の様な先入観がそもそも無く、もっと自由な発想を発揮させられます。
その例として、海外のインディーと日本のインディー作品を比べると、差が一目瞭然ではないでしょうか。
やはりインデペンデントな発想と言えば・・・海外です。
7:形にとらわれない
やり方やプロセスがハチャメチャでも、結果にこだわるところでは、時には素晴らしい。
また、売れるための企画を考えがちな日本のクリエイターに比べたら、やはり外国人が作家性のある作品にこだわったりします。
8:雇用の際に、日本の他のゲーム会社が釣っていない池で人材を釣ることになるので、競争率が低い
日本人のモデラーの『ポリゴン太郎』に面接をするとしましょう。
おそらく、彼は同じタイミングで3社・4社で面接を受けているはずですが、比較相手がいると、いつの間にか会社は『入社していただくように』頑張らないといけなくなります。
それに比べて、海外でアーティストを選んだほうが、競争相手がいないわけです。
ですので才能のある候補者に出会えれば、獲得できる確率が高いです。
9:隠れた宝石が、多いです
過去になんども思ったことですが、一つの例の使いましょう。
先日(2019年1月)、大阪でアメリカ出身の3Dアニメーターを面接をしましたが、見事すぎるほどのスキルの持ち主だった。
ポートフォリオをみれば伝わる凄さもあるけど、この人に1つトライアルをしてもらって、提供した3Dモデルをわざわざ改善してくれて、お題のアニメーション意外に2パターンも作成してくれました。
あ、アニメーターだけでなく、モデラーでもあるんだな・・・とのことで面接をしましたが、「そもそもなぜうちのような200名未満のところに応募をしているのか」と問いかけたら、『10社ほど応募をしたが、英語で応募をしたためか、回答ですらなかった』とのことでした。
この人については、雇用したところ、日本語でさえ覚えたら引き抜かれるやろうな〜とまごまごしてたら国へ帰ってしまったそうですが・・・やはり、ネックとなる部分は日本語が書けないと言う所だけで、それなりに優秀なプロは、外国人に多いです。
このような方を集め、日本の『良い』ゲーム会社につなげるために、このイザナウと言うサービスを開始しましたが、
人材の確保に困っておられるゲーム業界の経営者がいらっしゃればお気軽にメールでもください。
補足:
「・・・で、なぜを外国人の人材紹介やるのか?」と思われるかもしれませんが、断っておきますが、人材紹介としての収益性を見込んでいるからではありません。
弊社は日本のインディーズを世界に発信している会社ですが、そろそろ外国の優秀な開発者を日本に呼び込まないと、日本のゲーム業界に明るい未来がないからだと確信しているからです。
これはまた、別の記事に。
About the Author
外国人のプロを日本に紹介することが、私のミッションであり、宿命である