【外国人採用】その子供の教育は企業がどう支援できる?
2019年9月9日月曜日
国籍や話す言葉で殊更に人を区切らずに「寛容さと多様な文化への好奇心が発展につながる」という大前提を意識することが、企業にも人にも何より肝要。
*この記事はIZANAUを運営している株式会社アクティブゲーミングメディア(130人中6割が外国人社員)のスタッフによって作成されています。
少子高齢化が進む日本では、今後50年で総人口が9000万人を割り込む可能性も出ています。 (内閣府|平成30年版高齢社会白書より)
労働人口の観点でも、2020年の東京オリンピックや2025年の大阪万博と、これからインバウンド需要がより 高まる中で、多言語対応できる外国人労働者の力はキーになります。
メッセージアプリの「LINE」がエンジニア中心の拠点「LINE KYOTO」を新規開設した際、応募の8割は外国 人からだったそうです。 フリーマーケットアプリ大手「メルカリ」でも、2018年10月入社のエンジニア職の8割が外国人に。
インドや欧米・アジア出身の経営者視点と技術力を併せ持った人材によって、社内全体の開発力の底上げや多様な 意見でアイデアを前進させるのが狙いのようです。 オープンダイアローグなど、対話を基軸にして多様な視点が文化を発展させることはフィンランド、オラン ダや中国・深センの企業内事例、MITでの研究でも発表されています。 (『仕事に効くオープンダイアローグ』『ライフロングキンダーカーテン 創造的思考を育む4つの原則』 などを参照))
2019年4月からの新しい在留資格、特定技能ビザによって外国人労働者の受け入れがより広まりました。特定技能ビザ1号でも最低限の日本語能力が必要とされます。 メルカリでは、外国人の内定者に内定日から入社日までの日本語学習プランの提出を促し、Slackで定期報告すれば全額スポンサードしているそうです。 2号ビザの場合、子供を国外から連れてくることも許可されています。ただ労働者本人が日本語を話せて も、その子供は話せないこともあるでしょう。外国から来た子供たちが日本で学んだり、成長して働きたい と思ったりしても、機会すら得られないこともあるのです。
以前、NHKニュースで「見えない子どもたち」という特集が放映されていて、ショックを受けました。 日本にいる外国籍の6~14歳の子供のうち約8,400人が「不就学」だというのです。 (NHKニュース 2019年4月2日)
日本の憲法では、外国人は義務教育の対象外(2019年9月現在)。受け入れている学校もありますが、経済的事情・日本語能力のなさなどから学びたくても機会がない外国籍の子供が多くいることが、NHKや専門家の調査で分かったそうです。この人数はあくまで判明した限りなので、実際にはさらに多い可能性がありま す。一部の施設では6~10歳など「学齢超過」と呼ばれる児童が保育園やNPOの施設に留まり続けています。
日本に在留する外国人は256万人。国内に日本語教育施設は2,109あります。 (文化庁「平成29年度国内の日本語教育の概要」より)。 ただ、施設の所在は地域によってばらつきがあり、特に地方在住の外国人が日本語教育を受けるのはあまり 簡単ではありません。日本語教育施策は政府や自治体の対応を待つよりも、企業にも支援が求められていく でしょう。 欧米では、外国から就職した社員の子供に対して、外国人を積極的に受け入れている学校やインターナショ ナルスクールを紹介するのは当たり前の文化になっています。 ですので、日本の企業側が労働者の子供の学校を案内することは必須でしょう。
すでに保育所・保育園で外国人の子供を受け入れるケースはよく見られます。ただ前述のように義務教育は 外国人が対象外で、親の意思がなければ就学できないこともあります。また日本では高校卒業以上で就職率 が高くなる傾向がありますが、高校の多くは外国人特別枠(学力はあるが日本語能力が追いつかず、試験問 題が理解できない子供のための枠)の倍率がかなり高いのです。
日本語を教えさえすれば教育や雇用の問題がすべて解決するというわけでもありません。まして日本語以外 を母国語として育ってきた子供に、漢字・ひらがな・カタカナなど文字種類が多く語族の体系も違う(であろう)日本語を覚えさせるのは習得コストが高く、ハードルが高いでしょう。
LINEやメルカリの事例のように、英語と少しの日本語ができれば就職できるよう、語学以外のプログラミン グやホスピタリティ、マーケティングなどの技能を身につける機会を外国籍の子供たちにより多く提供する のも一つでしょう。学校だけでなく、世界中の大学で提供されるオンラインの無料講座を受講して条件を満たすと修了証が取得できる「MOOC」などの取り組みもあります。世界的に有名な「カーン・アカデミー」はゲームニクスも応用して子供から学習でき、日本にも有名大学が授業 を公開する「JMOOC」があります。 こういった存在についてのナレッジ共有を企業内で行い、外国人労働者にも適宜シェアするのも有効でしょう。
国籍や話す言葉で殊更に人を区切らずに「寛容さと多様な文化への好奇心が発展につながる」という大前提を意識することが、企業にも人にも何より肝要だと思います。 各地で行われている「子ども食堂」のように、日本人の子供だけでなく外国人の子供も受け入れて気軽に交 流できるイベントを企業が積極的に行うのも一つだと思います。SDGs(持続可能な開発目標)のために、今 後企業がCSR・CSVの枠組みを超えて取り組む必要もあるでしょう。